最新更新日:2013/03/25
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ありがとう五反野小学校!さようなら五反野小学校!

「思い考える」の教え痛感

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[新校長日記]


座右の書「福武の心」

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 年間の教育活動を振り返る時期だ。今年、学校評価シートが新しくなった。ひろく保護者にも評価いただこうと、開かれた学校づくり協議会が取り組み、田中靖子副会長が中心となって改定した。保護者も参加して勉強会も開いた。全家庭と協議会委員に評価シートを配り、結果が集まってきているという。保護者や地域の支援の姿勢が心強い。評価の指摘を真(しん)摯(し)に受け止め、新年度の経営計画の中に生かしていきたい。


 校長になって間もなく2年。判断を下す際、あの方ならどうするだろうと思い浮かべる人がいる。福武書店(現ベネッセ)の創業者、故・福武哲彦氏だ。幼いころ父親と生き別れた私にとって父のような存在だった。


 私が福武書店に入社したのは76年。社員200人弱の地方出版社だった。終戦後の混乱期に出版業を興した哲彦社長はもと小学校教師。学校のような雰囲気で、年度の区切りも始業式、終業式と呼んだ。9月になれば「2学期が始まった」。月曜には全社員を集めて講堂で朝礼があった。そこでの訓話や社内報での発信をまとめたのが「福武の心―ひとすじの道」。私の座右の書、哲彦社長語録である。


 赴任する前、現会長の福武總一郎氏から「志を持てよ!」の励ましの言葉と共にいただいた。新年度の学校経営計画を立案する今、読みかえして心に留まったのが次の二つの訓話だ。


 ●「これでいいんだ」と思うな(83年2月17日)


 「いま私たちは来年度の計画を立てているが、いちばんうれしく思うことは、今年はよくやった、これでいいといったムードが全くないことだ。満たされたと思えば、後は欠けるだけである。夢と希望に満ちた計画も、未来を先取りする姿勢も生まれてこない。現状に満足したら意欲は減退し、守りの姿勢になって発展は望めなくなる。立ち止まるということは、退くと同じだと思わねばならない」


 ●思いに思い考えに考え続ける(84年5月14日)


 「『思う』ということは『気がつく』事につながる。思いは頭の働きをよくし、ひらめきを生み、よいアイデアを生み出す源泉である。わたしは朝起きたら、まず今日は何をやってやろうと思い、思い続けながら出社する。思いに思い、考えに考え続けて30年。それが今日の福武書店をつくりあげた。目覚めたときから毎日『思い考える』くせをつけていただきたい」


 痛感するのは、こうした教えは学校経営にも通じるという確信に似た思いである。


 1年を振り返って自省する。学校で、よくやったと子どもや教職員をほめる。ついでによくやっていると自分自身をほめ、慢心してはいないか。学校のことが分かったつもりになり、感度が鈍ってはいないか。


 子どもたちに基礎基本の学力をつけようと始めた朝の音読や計算ドリルの取り組み方はベストだったのか。学校を開き、教育活動を保護者や地域に知ってもらう活動はホームページや掲示板、学校便りだけで十分だったか。土曜スクールの講師や、毎朝の街頭での交通安全指導にあたる地域の方に、やりがいがあったと感じてもらえるような対応が出来ていたか。


 一つ一つの取り組みを思い起こしてみる。限られた時間と教職員数を考えると、より効果を上げる工夫や改善、個々人の資質向上が必要なのだ。いつも心を新たに、みずみずしい精神を保ちつづけようと思う。


                 足立区立五反野小校長  三原 徹

  (2006年2月11日 朝日新聞第2東京面に掲載されました)


ふるさとの冬を心に刻む

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[新校長日記]


荒川探検と土手すべり

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 26日、冬の荒川土手を探検した。朝から、1、2年生は興奮気味だった。あいさつの声の大きさが違う。校門で迎える校長に、手に持った段ボールをうれしそうに見せる子もいる。


 段ボールを体の大きさに合わせて切り、縁を補強する。前に穴を開け、手綱代わりのひもを通す。土手すべりのそりだ。各自の名前が書いてある。


 季節の変化に関心や期待を抱く、それが荒川土手探検の目的だ。土手に着き、学級ごとに河川敷や河原を歩く。春、秋についで3回目だ。春にはテントウムシやタンポポの綿毛を見つけた。秋には岩の透き間で動くカニ、背中に子を乗せて跳ねるバッタがいた。冬の荒川土手には先日降った雪の名残がわずかにあるばかりで、生き物の姿は見えない。枯れ草の下に青い草がひそやかに根を張っている。手で押さえてみる。フワフワと弾力がある。ああ、生きているんだなと感じる。


 探検が終わると、お待ちかねの土手すべりの時間だ。担任の「どうぞ!」の声に、子どもたちは段ボールのそりを持って土手を駆け上がる。晴天続きで枯れ草は乾き、絶好のコンディションだ。


 手綱を持ち、馬乗りで滑る子ばかりではない。上に立ってスケボーのように操りながら滑降する子、段ボール箱を筒状に開き、中に入ってころころ転がりながら降りてくる子、担任を後ろに乗せ、顔を真っ赤にして降りてくる子、土手堤を見ながら後ろ向きに滑る子。サーフィン滑り、二人滑り、お昼寝滑り、工夫を凝らして楽しんでいる。


 「先生、このすべり方見て」「僕、サーフィンみたいにすべれるよ」「校長先生、写真うつして」。1時間半は、あっという間に過ぎ去った。


 「あ、富士山がある!」


 堤防道路に上がった子が、歓声を上げた。川向こうの高いビルの横に、雪をかぶった富士を見つけたのだ。「わあ、本当だ」。子どもたちの歓声が次々に上がる。冬晴れの澄んだ空気の中に、凜(りん)とした富士を望む。これも、ふるさと五反野の景色のひとつだ。この日の体験も子どもたちの心にしっかり刻まれただろう。


 帰校後、次の時間は国語だ。みんなで感想文を書く。題は「冬のあら川土手ですべったよ」。書き出しも決まっていて「すべったよ、すべったよ」。このあとにどう続けるのか、それぞれ考える。
 学校理事会で定めた「望まれる児童像」に「ふるさと五反野を大切にする子」という目標がある。そのための学習の副読本資料が「五反野」だ。創立50周年を迎えた3年前、地域学習に役立つよう教師と児童が住民の話を聞き、街の様子を調べ、地域と学校の過去、現在、未来をまとめた副読本を作った。費用は地域住民に拠出していただいた。毎年、新入生に贈られる。


 五反野小はどの学年も地域の探検に出かける。1、2年は生活科、3年以上は総合的な学習の時間を充てる。


 自然の残る荒川土手、せせらぎにザリガニもいる五反野コミュニティセンター公園、昔は70軒の店が軒を連ねたという番(ばん)神(じん)通り商店街。祭りや豆まきが楽しい西ノ宮稲荷神社。子どもたちに引き継ぎ、守ってほしいふるさとだ。


 地域でつくり、寄贈された副読本が日々の授業で生かされる。ふるさとを愛する子に育ってほしい。地域が子どもたちに注ぐまなざしは温かく、熱い。



                 足立区立五反野小校長  三原 徹

    (2006年1月28日 朝日新聞第2東京面に掲載されました)

ふるさとの冬を心に刻む2

土手すべり
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ふるさとの冬を心に刻む3

富士山が見える!
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校長室

お天気はよくなってきたけど、昨夜の雪で校庭に出られません。4年生の女子が大休みの時間に校長室に遊びにきました。
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節分

 2月3日は節分でした。学校のすぐそばにある西之宮稲荷神社でも神社の総代さんや神主さんや、町会の役員さんが集まって、みんなで豆まきをしました。

 天狗がいたずらをする鬼を退治すると、いよいよ豆まきの始まりです。

 校長もご案内をいただいて、皆さんに混じって副豆をまきました。五反野小の子どもたちがたくさん豆をひろいにきていて、マイクで校長が豆をまくことが紹介されると、「こっちへまいて〜」と大歓声を上げて声を上がります。

 できるだけ万遍にまいたつもりでしたが、みんなの手元に届いたでしょうか?

                           校長 三原 徹
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教師を育てる研究授業

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[新校長日記]


先輩の助言で視野広がる
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 なるほど教師を育てるというのは、こういうことなのかと、深くうなずく体験をした。


 5年生社会科の公開授業が、18日午後あった。足立区内を流れる綾瀬川は04年、水質が全国ワースト1だった。20年後、川がどうなっていてほしいか。環境はどう守られるのか考え、日本の産業や国土について考えを深める地区研究発表授業だ。綾瀬川は身近な素材なので調べる活動もでき、子どもたちの意欲も高まるだろうと期待がわく。


 授業を進める田中琢也教諭は今年、都の教育研究員に指名された。毎年、都が意欲ある教師数十人を選ぶ。研究員はテーマを決め、自らの教科指導力を高める自主研究を続けてきた。


 7年間、五反野小学校で指導を受けた歴代の校長、副校長も成長を見ようと、参観にかけつけた。区小学校社会科研究会の日にも当たり、区内外から80人近い教師が集まった。


 児童30人は緊張したのだろうか、いつものような伸びやかさがない。発言も途切れ途切れ。田中教諭にも緊張が見える。


 教室の壁に張られた調べ学習のリポートを見ながら、自分でできることは何か、対策は詳しく考えてあるかをキーワードにまとめて授業は終わった。


 終了後、研究協議会が開かれた。圧巻は、助言指導講師として招いた伊豆大島・波(は)浮(ぶ)小学校の磯村裕行校長の発言だった。かつて区の社会科研究の指導的立場にいたベテラン教師だ。


 「教育の弱点はいつもゼロからスタートして、研究が積み重ねられないことだ。子どもが45分間、あの席に座っていてよかったと思えただろうか。私は授業が始まって15分後には飽きていた。前の授業からの学習内容の確認に時間をとられ、地域の水質汚染の防止や改善のためにできることを考える、という本筋に取り掛かったのは授業開始後27分。45分間で子どもたちにどんな変容を期待するか想定して授業を構成していたか」


 「子ども同士が、できることは何だろうと話し合う場面を設定し、自分で考えよう、考えなければという状態に追い込む努力をすること」


 授業展開の具体的改善点の指摘から、授業案構成の視点に話は広がる。


 「自分の生活との接点を考える、ここが大事。綾瀬川がテーマなら上流や中流との関係を考える。上流域で農業をしていれば農薬が流れ込むかもしれない。中流域の埼玉県では生活排水も流入する。それを受けて下流域の足立の綾瀬川が息づいている。水質汚染を見えるエリアだけでとらえ、『ごみを拾う』『持ち帰る』が成果の学習だと5年生の視点としては狭い」


 磯村校長の指導は続く。


 「経済優先・生産第一主義の時代があり、それが公害を引き起こした。その反省から生まれた『人間優先』も考え方としてはおごり。環境という広い概念の一部として人間もいる。地球という土台が無いと人間も生存できない。環境優先という考え方を子どもたちが持てるような学びにしてほしい」


 45分の授業を観察しただけで、これだけの指導をする。磯村校長の考察の鋭さや感性の一端を深い感銘とともに学ばせていただいた。田中教諭は汗をかきながら大きくうなずいている。授業案の構築も指導手法の視点も、限りなく奥深い。


 柔和な笑顔ながら歯にきぬ着せぬ磯村校長の助言指導こそ、研究授業に果敢に取り組んだ田中教諭の一番の成果だ。



                  足立区立五反野小校長  三原 徹

    (2006年1月21日 朝日新聞第2東京面に掲載されました) 

折々の表情 仕事の励み

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[新校長日記]


日々 心に残る子らの笑顔
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 校長の一日は、どうなっているのか。穏やかな日和となった12日を振り返ってみる。


 朝5時起床。7時半出勤。パソコンを立ち上げ、その日の予定とメールをチェック、学校日誌など報告書決裁。


 7時55分に校門前に出る。当番の保護者や地域ボランティアも集まり、交通指導担当の教師とともに持ち場につく。あいさつ隊の子たちも校門前に並び、登校して来る子の出迎えだ。8時、一人一人に大きな声で「おはようございます!」と声をかける。出勤途中の町の人にも同様に。全員が登校し終わる8時15分には、延べ400回以上、声をかけ、元気が沸いてくる。


 8時20分から朝の職員顔合わせ、1分間スピーチ。この朝は1年担任の高草木政浩教諭から冬休みに野口英世記念館に行った話。若いころからの何枚かの写真が、紙幣と同じ構図のものだったそうだ。8時30分から、メール返信と文書決裁。


 9時40分から校内巡視。大塚光代教諭が受け持つ2年1組で色画用紙にクレヨンで絵を描いていた。人物も風景も、大きくのびのびと描かれている。大塚教諭に聞くと、「大きく描こう」と指示してもイメージが伝わらない。「ちょう(超)、でかく!」というのだそうだ。


 黒板に大きく「お話びじゅつかん」。続けて色画用紙、クレヨン。下書きは画用紙と同じ色のクレヨンか白、はい色などで、などと注意書きがある。読んだ本の中で心に残ったことを描き、題名を工夫してみんなに紹介する、国語と図工を一緒にしたような授業だ。


 子どもたちは一人一人が挿絵作家だ。敬君の絵は縦横に曲がりくねったジェットコースターのレールが、紙面いっぱいに描かれている。敬君の気持ちは頂上のコースターの中にあるのだろう。本は「かいけつゾロリのきょうふのゆうえんち」。子どもたちは怪傑ゾロリシリーズが大好きだ。シリーズの本を手にしている子は何人もいた。沙季さんの絵は「おばあさんのひこうき」の編み針を持つおばあさん。編み上げた飛行機に乗る自分を想像する表情が実にいい。


 挿絵を写す子が多いが、和也君は違っていた。「トムソーヤの冒険」でイメージを膨らませ、大河へこぎ出すイカダとすれ違う客船の絵を描き上げた。大きな外輪がついている。船首に立つ船長の雄姿。子どもたちがどんな題をつけるのか、完成が楽しみだ。


 昼休み、歓声に誘われて校庭に出た。大喜びでボール遊びや縄跳び、鉄棒などで思い切り体を動かしている。私の手にはもちろんデジカメ。ホームページに紹介できるネタ探しだ。「校長先生、写真撮って」「ホームページに載りたい」と声がかかる。「校長先生、絶好調!」。子どもたちから、だじゃれが飛ぶ。思いがけなく素晴らしい表情が撮れることもある。望遠で狙う子の表情は自然だ。


 写真は2、3行のコメントをつけて即アップ。保護者や地域の方から「見てるよ」の声を掛けてもらう時、学校が温かく見守られていることを実感する。


 2時から来客対応、電話応対、文書作成、HP掲載情報承認、校長会報告書作成。2年生の読書の取り組みについて担任らと懇談。PCメンテナンスでスケジュール管理を改善。


 21時帰宅。新校長日記の原稿執筆、読書、ネットサーフィン。少しまぶたが重くなってきた。子どもたちの笑顔を思い浮かべつつ、24時就寝。


                  足立区立五反野小校長  三原 徹

    (2006年1月14日 朝日新聞第2東京面に掲載されました) 



雑誌連載「地域運営学校の志気」紹介

 今年度の4月から「学校マネジメント」(明治図書)という教育雑誌で、毎月、五反野小学校の取組みを紹介できる機会にめぐまれています。以下のものは、5月号の内容です。(校長 三原 徹)


『朝の課外の取組みで基礎基本のパワーアップ!』


 地域運営学校である五反野小学校で、理事会が1番に望む教育成果は、子どもたちに基礎基本である「読み書き計算」の指導を徹底し、学習内容をしっかり身につけさせるということだ。


 朝登校し、校庭で元気に遊んでいた子どもたちが教室に入り、まずは読書で心を落ち着ける。そして8時40分、緊張のまなざしで子どもたちが身構え、校内が静まり返る。瞬間、学校中に流れるファンファーレ。子どもたちの手がいっせいに動き出す。全校一斉で行う、基礎学力定着のための「パワーアップタイム」が始まった。


 教室の前面にあるTV画面のタイム表示が秒数を刻んでいる。子どもたちは、配られたプリントの解答欄に、一斉に答えを記入していく。全問出来た子は画面を確認し、自分の回答に要した時間を記録する。どの子の眼も真剣だ。私語一つなく問題に取り組んでいる。鉛筆を滑らせる音だけが教室に響く…。


 パワーアップタイムは、学校理事会の意向を取り入れて始めた学校独自の取組みだ。すべてのクラスに担任と副担任が全校体制で張り付き、朝一番に正課の時間外の時間を使って、学校オリジナルの算数と国語のプリントに取り組んでいる。


 算数のオリジナル教材は全学年共通で利用する百マス、百題計算と、早く終わった子どもたちのために、学年ごとの内容の計算練習問題が用意されている。国語の漢字は、学年で習う漢字が夏休み前までに前倒しで学習できるよう、プリントをつくった。月曜と木曜日は音読(10分間)。火、水、金曜日は百マス計算や漢字練習(計15分)に取り組む。


 基礎基本の定着については、学校理事と教師とで全国の優れた実践校を視察訪問したり、優れた実践者を招いて勉強会を持つなど、協働して効果を高めるための研究を重ねてきた。


 9月以降は、辞書を引いて熟語の理解を増やすなどの学習も取り入れている。週に1度は進級テストがあり、子どもたちは自分の学習の定着度合いが確認できる仕組みだ。


 加えて昨年秋からクラスごとで進めてきた音読も、12月からは全校の児童の前で、保護者や地域の方も自由参観で見守る中で、学年ごとの発表を始めた。木曜日の児童朝会の後、お得意のタイトルの音読を披露する。どの学年の声がそろっているか、元気がいいか、活舌はどうかなど、他の学年と比較したコンテストのようなものだ。

 1年生が元気いい。昨年から学校選択制が導入され、学区外からも子どもが入学し、他の学年に比べ4割も人数が多いのだ。他の学年の担任教師も子どもたちも、負けてなるかと挑戦意欲に燃えている。校長室の窓越しに音読のハーモニーが、今日も心地よく響いている。

守られて育つ教師たち


[新校長日記]


多忙な副校長、学校の柱
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 五反野小の校長になって1年半。教職員、子ども、保護者や地域の反応を直接つかみ、実態を知る機会は多くない。そんな私にとって一番頼りになる存在が、野田紀道(とし・みち)副校長(49)だ。初任は新宿四谷第一小、そのあと足立千寿第四小、荒川第四峡田(はけ・た)小と担任を務め、荒川ひぐらし小で教頭になり、今年4月、11年ぶりに足立の五反野小に副校長として帰ってきた。教師になって27年目、現場一筋に歩いてきた。学校のことなら隅から隅までわかっている。


 父も母も、叔父も伯母も教師だった。小学校に上がる前、祖母が風邪でもひいていたのか、母に連れられて学校へ行き、母親が立つ教壇わきの小さなイスに授業中、座らされていたことがある。休日には子どもたちが家までよく遊びに来ていた。大学生になった教え子たちが連れて行ってくれた海で、泳ぎを覚えた。幼いころから自分の仕事は教師だと決めていた。


 教師冥利(みょう・り)は、担任した児童を送り出すこと。いまでも一人一人の子どもの顔がくっきりと思い浮かぶ。


 いま、管理職になりたがらない教師が多いという。野田副校長はなぜ、管理職をめざしたのか。思い当たることは、教師になりたてのころ、自分を温かく見守り、かばってくれた管理職がいたことだという。教師が楽しくて仕方なかった。あのころは土曜日も学校があり、授業時間に余裕があった。指導すべき教科の内容をすべて教え、学期末の最後の1日にお楽しみ会を企画し、フルーツバスケットやイス取りゲーム、子どもたちと一緒に大騒ぎをした。


 「勉強をしないのか」。保護者からの苦情を教頭が電話を受け、お楽しみ会を開いた意図を自分にかわって説明してくれた。教師を認め、もり立てようとする管理職がいた。


 副校長の一日は多忙を極める。五反野小で一番忙しい。朝7時ごろ出勤する。校内の巡視から始まる。学校開放をしている本校では運動場、体育館が毎夜、使われる。異常はないか目を配り、くまなく回る。


 職員室の自席に戻るとメールのチェック。視察依頼や地域立学校に関する問い合わせ、資料請求など格段に連絡が多い。緊急のもの、返事を要するものを選択し、手早く整理する。校長の机に警備日誌や保健日誌、看護記録とともに、前日の学校状況を記録した学校日誌を提出しておくのも朝一番の仕事だ。


 そのころになると教師たちも出てくる。授業の準備に追われる担任に代わり、保護者からの欠席の電話連絡を受けてメモし、担任に伝える。


 続いて教室巡視の時間だ。子どもたちは落ち着いて授業を受けているか。授業の進め方はどうか、丹念にみる。落ち着いて授業が受けられず、担任を困らせている子には声をかけ、意識を授業に向かわせるなど、さりげなく担任をサポートする。


 地域の支援者やPTAとの連絡や打ち合わせ、急な来客への対応……、実にテキパキと仕事をこなしていく。担当が不分明の仕事はすべて副校長の担当になるのだ。校長の相談にものる。校長の女房役でもある。


 現場で子どもと一緒に学んでいたところから、見守る立場に変わった。「教師は子どもの担任、副校長は教師の担任」。教師を温かく見守り、もり立てていくのが仕事だと思っている。


 毎日、充実しているという。この相棒と力を合わせ、五反野小を日本一にしていきたい。

                  足立区立五反野小校長  三原 徹

    (2005年12月10日 朝日新聞第2東京面に掲載されました) 

下校児童の安全対策は                                                    (写真:18日午後、通学路点検のため体育館に集まってくれた保護者と児童に「我が子を守る5か条」を話す)

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[新校長日記]


家庭での取り組み重視を

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 下校途中の小学生が犠牲になる痛ましい事件が続いた。「地域では何をすればいい?」。いち早く、開かれた学校づくり評議会の石川博義会長が声をかけてくださった。区教委からも対策実施の指示が出た。保護者や地域の協力がいまこそ必要なときだ。石川会長に町会長とPTA会長とを交えて協議し、第1弾として対策をたてた。


 学校はまず「イカのおすし」を指導する。(1)ついて「いか」ない(2)車に「の」らない(3)「お」おごえを出す(4)「す」ぐに逃げる(5)周りの人に「し」らせる、の5項目だ。さらに「一人にならない」「大勢いる道を帰る」「寄り道をしない」「独りで遊ばず人目につかないところを避ける」「必ず行き先を告げて外出する」の五つと、給油所は110番の店で、コンビニの人も助けてくれることを頭に入れるよう指導する。防犯ブザーの再点検▽複数学年での集団下校▽自分で身を守るための行動、不審者の見分け方を示す危機回避マニュアルの作成と低学年の家庭への配布▽不審者情報のサイト公開、保護者へメールでの情報発信も決めた。


 保護者へは、(1)各児童の通学路の安全確認を促し、18日夕、保護者と児童が通学路を歩いて危険な場所、一人になる区間と距離を確認し、安全マップを作る(2)自転車へ「パトロール中」のワッペンを取り付け、買い物など外出時に目を光らせる。


 地域で検討中の対策は、(1)自主的な防犯パトロールの時間帯を低学年の子の集団下校時刻に合わせる(2)下校時の通学路を大勢の人の目で見守る。


 所轄の綾瀬署にも(1)セーフティー教室の開催(2)通学路パトロールの際、巡視を知らせる案内も流す、の2点をお願いした。


 しかし、安全対策の要は何といっても家庭だ。18日、通学路点検で学校に集まる保護者に話すため「子どもを守る5カ条」を作った。第1に防犯ブザーの再点検。手の届く場所についているか再確認し、遊びに出るときにもつけて行けるよう容易に取り外せる形にする。鳴った後の止め方、電池交換の仕方を練習しておく。


 次に、「イカのおすし」を繰り返し教える。3番目は、子どもの危機察知・危機管理能力を養うことだ。不審者は見た目ではわからない。「○○の場所を教えて」「車に乗って一緒に遊びにいこう」などと話しかけてくる。手をつかむ、体に触るといった言動で初めてわかることを教える。「誰もいないところで、見知らぬ人から道を聞かれたら?」「知らない人に捕まったら?」。ケースを想定し、自分ならどうするか考えさせる。


 四つ目は、地域住民にあいさつする習慣をつける。顔見知りになっておけば、地域が見守ってくれる。保護者も買い物に連れて行き、うちの子であることを店の人に見知っておいてもらう。五つ目は、帰宅後の遊び場を保護者も一緒に歩き、危険な場所、コンビニ、給油所、子ども110番の家など緊急避難場所を自分で見つけさせる。


 世田谷区の子ども家庭支援課が、5歳児と、その保護者のためにそれぞれ危機回避マニュアル「初めてのいってきます!」を作成し、配布していることを朝日新聞の記事で知り、早速、取り寄せた。活用できることが多くあるはずだ。


 このことに限って言えば、独自の施策で他と差別化する必要などない。あちこちの事例や提言をどんどん収集し、いい施策は迷わずまねするべきだ。


                 足立区立五反野小校長  三原 徹

    (2005年12月17日 朝日新聞第2東京面に掲載されました)

励まし、子どもの学び導く

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[新校長日記]


製作授業 アイデア次々
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 松ぼっくりとドングリの帽子をくっつけ、麻ひもでぶら下げる。作品名は「冬支度のミノムシ」。構想はすごいが、なかなか接着剤がつかず、悪戦苦闘中の孝将(たかまさ)君。ドングリと木の枝、麻ひもと紙コップでけん玉を作り、技を披露したのは姫乃さん。愛花さんは中にドングリを入れて紙皿2枚を張り合わせた「タンバリン」でリズムをとる。つまようじの両端に刺したドングリがレーシングカーのタイヤそっくりに見える太(たい)賀(が)君のミニカーも見事だ。振り子はぶら下がった松ぼっくり。文字盤にドングリ12個が丸く並び、長短の木の棒の針が3時を指す柱時計を作ったのは日向子さん。


 黒板に「私の秋の宝物を教えてあげよう」と大書してある。宮川佳子(よしこ)教諭の受け持つ1年3組の31人は製作に熱中した。想像力豊かな、自然の素材を生かした作品が仕上がる。生活科の時間だ。


 この日の授業は、集めた自然の素材を使い、友だちや家族に「秋を伝える」。宮川教諭が所属する都小学校生活科・総合的な学習教育研究会のテーマ「確かな学びを深める語りかけ」の検証授業でもある。


 生活科は、子どもたちの創造力を伸ばす教科として大きな可能性があると感じていた。今年5月、都の研究会に参加するよう声をかけられた。研究会で研(けん)鑚(さん)を積み、今回、研究授業をするチャンスをもらった。


 教師からの働きかけによって自ら発見する楽しさ、自然の面白さに気づき、自分の考えを深める学習を――。宮川教諭の狙い通りに授業は進むのか。あらかじめ配られた指導案を片手に研究仲間の教師たちも授業の進行を見守った。


 「面白いものが出来たね。これはどんな風に使うの?」「どうやって作ったの。みんなにも教えてあげようか」。一人一人の子の状況に合わせ、考えを深めさせたり、次の行動を促したりする言葉が、宮川教諭の口から次々と出てくる。


 こういう行動を見たら、こう声をかけよう。こんな場面ではこう励まそう。いろんなシーンを想定し、子どもの学びをどう導くか考え抜いた言葉なのだ。


 普段、私は教師たちにこう話している。「子どものよいところを見つけ、何が良かったのか具体的に褒めよう。どういう行動が褒められているのか他の子にもわかるように。どういう場面に遭遇したら、どんな褒め言葉を使うか考え、書き出しておこう」「1人の教師が100の褒め言葉を書き出せば、30人で3千の褒め言葉が用意できる。同僚の言葉も活用し、あらゆる機会をつかまえて子どもたちを認め、励まそう」


 研究授業の後、教師たちによる研究会が開かれた。宮川教諭は「教師も思いつかないアイデアを次々と思いつく」「子ども同士のかかわり合い、気づきと発想の広がりが連鎖的に起きていった」と振り返った。


 圧巻は瑞樹(みずき)君の「皿回し」だった。紙皿の中心に微妙な大きさの穴を開け、ドングリの帽子を突き抜けないように接着剤とテープで固定し、それをつまようじにのせて回したらビックリ! 皿回しの完成だ。


 教師さえ思いつかない作品を仕上げた。みんなが周りに集まり、教えを請うた。得意顔で、うれしそうに教えてくれた。


 褒め、励ます言葉をかけて子どもたちの意識や行動を願う方向に導きたい。そんな授業を創(つく)るという宮川教諭の狙いが見事に実を結んだ時間だった。
   
                  足立区立五反野小校長   三原 徹

    (2005年12月3日 朝日新聞第2東京面に掲載されました)



親元を離れ自然教室に

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[新校長日記]


指導が結実 素直さに評価
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 昼間は厚く重なっていた雲が吹き払われ、満月とともに星空が広がった。ここは房総半島の西南、東京湾に面した千葉・鋸南(きょなん)町の足立自然の家。五反野小の4年生57人が16日から2泊3日の日程で滞在し、自然教室を満喫した。親元を3日も離れるのは入学以降、初めてだ。


 自然教室は区内の4年生全員が対象だ。教師と子ども、子ども同士が寝食を共にし、体験学習や野外活動を通して学習力を高め、心も体も健康になる、それが狙いだ。


 聞いたことは忘れ、見たことは覚え、体験したことは理解するという。特に小学4年のころの体験は生涯忘れないものだ。漆黒の空に輝く星座、のどかな牧場の牛の鳴き声、港に水揚げされたばかりの魚など、新鮮な驚きと感動を心に刻んでほしい。


 昼間、鋸(のこぎり)山の日本寺の大仏広場で持参した弁当を食べ、千五百羅漢(らかん)の並ぶ岩肌を左に見ながら、山頂の地獄覗(のぞ)きまで走破した。沖合を行くタンカーと三浦半島を初めて見た。


 指導員の下村庸三さん(50)が下山の途中、百尺観音の前で、鋸山から自ら発掘した650万年前の貝とサンゴの化石を見せ、この辺りが太古、海底であり、地層から隆起と褶曲(しゅうきょく)があったことがわかることを説明してくれた。


 24年間、私立女子高の地学の教師だった。本業の篆刻(てんこく)の仕事が忙しくなり、2年半前、退職した。石がライフワークの下村さんは何度も鋸山に来ている。自然教室の指導員を引き受け、五反野小は今年、9校目だ。


 下村さんが星空の観察も指導してくれるという。午後7時、玄関前に集合した子どもたちはグラウンドに向かった。


 真っ暗な夜道を歩いた経験がある子は、ほとんどいないだろう。月明かりが頼りの道は、それだけで自然の奥深さを感じさせるようだ。月のすぐ横に、地球に大接近した火星がひときわ明るく輝いて見える。


 グラウンドに到着すると、山陰が月明かりを遮る場所に誘導し、北向きに座らせた。「5千年前、チグリス・ユーフラテス川沿いの草原で羊飼いたちは、羊がオオカミに襲われないよう交代で寝ずの番をした。広い草原には満天の星があるばかり。星座はそこから生まれた……」


 夏の大三角、ペガサスの四辺形、アンドロメダ、カシオペア、北極星……。子どもたちはかたずをのんで耳を傾ける。


 「月の光で自分の影が出来るとは思わなかった」「遠くに見える人工の光が眼に痛い」


 感想を口にする子どもたち。他の子の感想が、自分の学びにもなる。
 17日はマザー牧場と、夜のスポーツ大会だ。班のメンバー構成からスポーツ大会の内容まですべて自分たちが決めた。自由時間さえ、どう遊ぶか考え、ゲームやトランプなど、役割を決めて、ちゃんと準備している。


 「自分で考えて行動できる、人の話がキチンと聞ける素直な子たちですね。担任の指導が手に取るようにわかる気がします」。下村さんの感想だ。


 4年担任は山本治美教諭と、倉橋公子教諭だ。ベテランとはいえ、難しい年齢の学年を女性二人で指導してきた。学級指導の成果を評価してもらえたことがとてもうれしい。


 あいさつのできる子。人の眼を見て話が聞ける子。自分の意見をきちんと言える子。そんな子どもに育ってほしい。保護者の願いは着実に子どもたちの身に付いてきている。
                足立区立五反野小校長    三原 徹

    (2005年11月26日 朝日新聞第2東京面に掲載されました)




新任教師もまれて成長

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[新校長日記]


これが2年生? 45分集中
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 チャイムが鳴ると入り口に注意を集中し、算数の教師を待つ。三津山(みつやま)友章教諭(29)が、教壇の正面に立つやいなや、「起立!」の号令がかかり、「よろしくお願いします」。


 少し教室がざわついているなと感じた三津山教諭は、ささやくような声で、「うしろ、聞こえる? いくよ!」。そして小さな声で、「三津山先生クイズ」。子どもたちも小さな声で、「イェイ!」。元気がないなと感じたときは、大きな声を出す。子どもたちも思い切り大声で、「イェイ!!」。


 黒板に張る短冊の端を見ただけで、子どもたちは「新しい計算を考えよう!」。学習単元を口にする。さらに次の短冊の端を見て、「ひとつ分の数×いくつ分の数=全部の数」。次を見て「二の段」。


 教師が説明する前に、何を学ぶのか確認する。集中して授業に向かう様子は、「これが2年生?」と疑うほどである。


 ここは大塚光代教諭が担任の2年1組の教室。冒頭の光景は算数専科の三津山教諭と子どもたちが決めたルールなのだ。


 黒板に、自転車の絵1枚を張った。3組の荒木克之教諭の顔写真をつけたキャラクター2人が乗っている。手作りの教材は子どもたちに大うけだ。「ひとつ分の数は2人」「いくつ分は1台」「全部の数は2人」「2×1=2」。次々に答える。


 次に二の段の式を書いた紙を黒板に張り、教室が半分に分かれて交互に問題を出す。「ににんが?」「四」「にさんが?」「六」……。タンバリンに合わせ、繰り返し暗唱する。


 今度はペアになって問題を出す。大塚教諭と三津山教諭が手本を演じる。「にさんが」「……八」。大爆笑だ。


 人数が足りないと三津山教諭は、後ろで授業を見守っていた校長を呼んだ。「校長先生とやりたい人?」の声に一斉に手が挙がる。校長は石川駿君と組むことになった。ちょっと緊張した様子で石川君は問題を出す。


 「最近、みんなと会ってないな」。三津山教諭が聞こえよがしにつぶやく。教材の入ったかごから取り出したのが、手作りキャラクターの赤ネコ君だ。


 性格の違うネコが何匹かいるという。赤ネコ君は、勉強はあまり出来ないけれど運動が得意な、一番人気のキャラクター。ちなみに黄ネコ君はクラスの雰囲気を盛り上げるムードメーカー、青ネコ君は運動があまり出来ないが、勉強は得意である。


 黒板に張った赤ネコ君の手にミニカー2台の入った袋の絵を描く。同じ袋が六つ。「赤ネコ君に教えてあげよう。ここからは指名なし発言でいくよ」


 子どもたちは次々と立ち、発言する。「ひとつ分の数が2台、いくつ分が6袋だから全部で12台です」「2+2+2……と6回足してもいいです」。同級生の発言が終わったら、自分の意見を重ねて発表する。聞いていないと説明できない。45分間集中は途切れなかった。


 これが新任教師の授業か。4月、緊張して声も満足に出なかった三津山教諭を思い出した。ベテランとチームを組み、毎日もまれた。空いた時間は授業案作りや教材研究に費やす。日々の積み重ねは、教師をぐんぐん成長させる。秋の学校公開で保護者から称賛を浴びた授業は、こうして生まれた。


 学校の教育方針「地域が望む学校像」に「教師がいきいき、自ら学び自ら考える学校」という文言がある。三津山教諭の姿は見事にそれを体現している。
  
                足立区立五反野小校長   三原 徹


   (2005年11月12日 朝日新聞第2東京面に掲載されました)

感嘆符 携帯電話専用サイトを開設しました。

 携帯電話からも五反野小学校のホームページにアクセスできるようになりました。
 ホームページ右下の真似したくなっちゃう学校の下に「QRコード」(二次元バーコード)を載せました。

 QRコード読み取り機能を持った携帯電話で、右下の画像を読み込むと、五反野小学校の携帯サイト用ホームページURLが自動入力されます。
 携帯電話でhttp://からはじまる長いURLを入力する負担や、入力間違いをすることもなく、だれでも簡単に携帯サイトへアクセスすることが出来ます。

QRコードとは? 

http://www.denso-wave.com/qrcode/aboutqr.html

感嘆符 便利なサイト内検索機能ができました

 毎日更新をしている五反野小学校のホームページですが、過去の記事を探すのに苦労されたことはありませんか。サイト内検索ができるようになりました。

 ホームページの右上のテキストボックス枠の中に、探したい記事に関連する言葉をいれてください。そのあと[検索]のボタンをクリックすると、その言葉が入った記事だけが真ん中に並びます。とても便利な機能です。

感嘆符 あいさつの評語紹介

 あいさつの評語を子どもたちから募集して、代表作品を「あいさつ通り」ののぼりにし、門の周りに立ててあります。素晴らしい作品がとても多くあったので、今日から毎日ホームページのメッセージ欄(一番上)に載せることにしました。今日から始まりました。記念すべき第1号、たなかなおきくんの作品です。(校長 三原 徹)

地域ぐるみで道徳講座

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[新校長日記]


教師の力で信頼のパイプ
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 「清永(きよなが)せんせーい」「さよーならー」。下校する1年生の声が職員室に飛び込んでくる。1年の学年主任で1組担任の清永亜矢子教諭は、元気な声を聞きながら、秋の道徳の公開講座を思い出していた。

 地域と一緒に、1〜6年の全学級で教材作りから取り組む計画に変わったのは、「地域とのコラボレーションの好機」と、区教育委員会から強い勧めがあったからだ。保護者や地域住民をゲストティーチャートとして招くのが前提だ。同僚教師たちは夏休みの間に授業案を考えてきてくれることになった。

 主題と狙いは何か。時間内にどうゲストティーチャーに活躍してもらうのか。授業はクラスごとか学年ごとか。学年の場合、どの教室を使うのか。学級単位なら、講師が何人も必要だが、人材はいるか。清永教諭は、2年担任の梶田知代教諭に助けを借りながら企画を練った。

 夏休み明け、学年ごとに検討した授業案が出そろった。公開するからには、多くの人に参観してほしい。実施日は秋の学校公開中の土曜日と決めた。

 ゲストティーチャーの人選と調整は、開かれた学校づくり協議会の石川博義会長に依頼した。3年の授業案は「働くことの大切さ」。ボランティアで公園の清掃を続けている方というリクエストに、「大丈夫、ぴったりの人がいる」。石川会長の頭に浮かんだのは、番神(ばんじん)通り児童遊園で頑張る小野ひさ子さんだ。4年生のあいさつに関連した授業企画は、交通ボランティアの松岡茂子さんと酒井ノリ子さんにお願いしよう。

 5年の「気持ちのよい礼儀」は、のびのびスクール講師で少林寺拳法師範の黒田素久先生がいい。6年はキャリア教育に関連させて、目標に向かって努力する大切さを、私立幼稚園の田中靖子園長、駐在の高田敏文巡査らから学ぶ。地域住民の多様なキャリアを生かした教育活動は学校理事会を持つ本校の研究課題でもある。

 最後まで決まらなかった6年のゲストは、同僚の大塚光代教師が、知人の川名美紗子看護師を紹介してくれた。全くの偶然だが、川名さんは五反野小出身という。1年の食事のマナー、2年の整理整頓のゲストティーチャーは、ともに保護者にお願いすることになった。

 入念な打ち合わせやリハーサルが必要だ。教師もゲストも日中、時間が取れない。たいてい夜に集まり、学年ごとに打ち合わせを続けた。

 当日。土曜日の学校公開は700人近い参観者であふれかえった。保護者や地域の方から、こんな感想が寄せられた。

 「公園や通りを清掃してくれるボランティアの方の話から、子どもたちの遊ぶ場所を地域の方々で見守ってくれていることを知り、すごく安心した」

 「地域の方が先生というのは新鮮だ。実践している人の話だから説得力がある」

 「働くことに興味を持ち、目標に向かって生きるときに体験することは、どれひとつ無駄なものはなく、未来に役立つとわかったと思う」

 清永教諭は来年に思いをはせる。地域住民と信頼のパイプが出来た。来年はいろんな場面で地域の方々の力を借りた授業を企画していきたい。

 ゲストと作る授業は、思い通りになりにくい。だが大変さを補って余りある感動と学びを子どもたちが体験できる。それに、互いに支えあう団結力の強い同僚教師たちがいる。

                  足立区立五反野小校長 三原 徹

     (2005年11月5日 朝日新聞第2東京面に掲載されました)


地域が育てる子どもの心

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[新校長日記]


あいさつの大切さ授業で
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 学校公開週間の最終日の22日、土曜日だが、授業があった。4年1組の教壇に立って子どもたちの顔を見ていたら、松岡茂子さんはドキドキしてきた。「最初にゲストティーチャーから自己紹介をしてもらいます」。担任の山本治美教諭から紹介され、すっと気持ちが落ち着いた。

 毎朝顔を合わす交通ボランティア仲間の「開かれた学校づくり協議会」副会長、井口信昭さんから頼まれ、ゲストティーチャーを引き受けてしまった。
 
 五反野で生まれ育ち、五反野小学校を卒業した生粋の五反野っ子だ。現在も両親と学校のすぐ近くで住らす。息子さん夫婦も近くに住み、来春には孫が小学校に上がるという。親と子と孫と4代、足立の住人だ。

 自分が小学4年生だった44年前、近くに住むおばあさんが、登下校時に必ず交通安全の声かけをしてくれていた。少し怖かったけれど顔を見ると、「交通ルールを守らなきゃ」と思った。

 きっかけがあれば地域に役立ちたいと考えていた。昨秋、児童の交通安全指導と声かけのボランティアを募ると聞き、迷わず手を上げた。あれから1年、毎朝、街頭立っていると、あの光景が目に浮かぶ。

 元気な挨拶ができる子ばかりではない。声の出ない子、反応のない子、いろいろだ。高学年に声の出ない子が多い。そんな子がある日、小さな声だけれどあいさつを返してくれた。心がとても温かくなった。地域の子どもたちはみんな孫のようなもの。自分がどんな気持ちでこの場所に立っているのか、子どもたちにも知ってほしい。

 授業は道徳、テーマは「声にならないあいさつ」。こんな話から始まった。朝のラッシュ時、改札口に立ち、「おはようございます」とあいさつする駅長の横を乗客が無表情に通り過ぎる。京子さんは「どうして駅長さんに応えないのだろう。自分はあいさつしよう」と考えたが、いざとなると声が出ない。

 子どもたちが駅長と京子の役を演じてみる。駅長にあいさつされたとき、京子はどんな気持ちだったろう。ひるがえって、自分は今まで、どんな気持ちで毎朝、地域の人にあいさつしていたのだろう。

 「京子さんが、声が出なかったのはなぜ?」「そのときの駅長さんの気持ちは?」。礼儀の大切さを知り、誰にも真心をもって接することの価値に気づいて欲しい。子どもの心の内面に迫りながら考えを深めていった。

 「おばさんも最初は恥ずかしかった。でもみんなと仲良くなりたいと思った。『おはようございます』という元気な声を聞くと、すがすがしい。みんないい子になってねと願ってるの」。

 週明け、松岡さんの手元に子どもたちからの礼状の束が届いた。「あいさつの大切さがわかった。今後は自分からあいさつしたい」「家族におはようを言ってなかったけれど、これからは言おうと思う」「いろんな人にあいさつするようにしている。やっぱり気持ちがいい」。

 思い切ってゲストティーチャーを引き受けてよかった。子どもたちと心が通じた。礼状を読んだ松岡さんは、自分もすごく元気をもらったような気がしたという。全員、自分からあいさつが出来るようになる、そんな日が来たらいいと考えながら、今日も信号機の下に立つ。

 地域が子どもを育てる。暖かい地域の眼に見守られながら、五反野の子どもたちの心に、礼儀と人を思いやる心と、素直さが確実に育っていく。

                  足立区立五反野小校長 三原 徹

    (2005年10月29日 朝日新聞第2東京面に掲載されました)





子どもたちは教師の鑑

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[新校長日記]


生き生き学ぶ姿に学ぶ
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 荒木克之教諭(31)の担任する2年3組に異変が起きている。「子どもが変わってきた」。同僚教師が感嘆の声をあげたのは5日午後、15分間のパワーアップを再現した校内研究授業だった。

 研究授業は4つのパートに分かれていた。最初は、一茶の句の暗唱だ。模造紙に書かれた8句を、子どもたちは諳(そら)んじている。それぞれが、句の中でどの部分に感情を込めて読みたいか考えながら声を出す。

 「感情を込めて暗唱できる人?」。荒木教諭の声にパッと手があがる。暗唱する子の口元を見つめ、耳を澄ませて聴いていた周りの子が、暗唱した子の気持ちになって感情を込め、復唱する。そこに、人の気持ちを読み取ろうとする学びがある。

 続いて、国語の教科書の「きつねのおきゃくさま」の朗読だった。森で拾ったヒヨコやアヒル、ウサギを太らせてから食べようと世話をするが、「神様みたいなきつねのお兄ちゃん」と信頼され、気持ちが変わる。最後は、命をかけてオオカミからみんなを守り、恥ずかしそうに笑って死んだキツネの話だ。

 全文が子どもの頭に入っている。目は、宙にある情景を追っている。各自の朗読するパートが決まっており、自分のパートを見事にこなしていく。

 集中して聴いていないと、滑らかには進まない。一人ひとりが舞台の袖で出番を待つ名優のようだ。時に一人で、時には全員で、グループに分かれて流れるように読み継いでいく。そこにも他の子の感情を読み取り、自分のものとして調和していく学びがある。横や後ろを向いている子など一人もいない。朗読を終えた子どもたちの顔には、全員でひとつの作品を仕上げた深い満足感が漂っていた。

 3番目はフラッシュカード。「おそい」のカードがめくられたら、「はやい」。「ちぢむ」なら「のびる」。言葉を瞬時に読み取り、対義語を答える。最後は10マス計算。縦に並んだ数字に足す数を担任が指示し、10のマス目に答えを書き込む。子どもたちの頭はフル回転だ。あっという間の15分が終わる。

 子は親の鑑(かがみ)、というが、まさしく子は教師の鑑でもある。いかに授業力を向上させるか常に考え、よいと思えるやり方はすぐに取り入れるなど、学び続ける姿を身をもって示してきた。

 いま授業に向かう子どもたちの表情は生き生きとし、夏休み前とは全く違う。転機の一つは、学校理事会が企画した校内研修だった。講師の板橋区立新河岸小学校の杉渕鉄良教諭(46)から、先生が「先(ま)ず生き生き」と聞いた。昨年ともに1年を担任し、今年は国語専科の中田麗子先生とのチームティーチングにも影響を受けた。二人とも授業力の確かな教師だが、素直に学ぶ荒木教諭も素晴らしい。

 授業の工夫は、毎朝交代で発表する1分間スピーチ、週1回課す作文など、数えればキリがない。算数の単元名を読み上げるときも感情を込めるよう促し、話す力をつけさせている。こうして子どもたちの学びを導き、自らの授業力も磨く。

 荒木教諭は、朝5時半に自宅を出る。体育記録会に備えて、早朝練習に励む6年生の指導のためだ。7時には学校に着き、校庭に白線を引いて、子どもたちの登校を待つ。その担任の背中を子どもたちは見ている。

 17日から1週間は学校公開、授業参観週間だ。成長した子どもたちの姿に、驚き喜ぶ保護者の顔を見るのが楽しみである。

                  足立区立五反野小校長 三原 徹

    (2005年10月15日 朝日新聞第2東京面に掲載されました)
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