お忙しい中、また震災の影響で混乱している中おいでいただきました、ご来賓、保護者の皆様方、どうもありがとうございました。
厳粛かつ感動的な式であったとの評価をいただきました。どうもありがとうございました。
式辞
式辞に先立ちまして、一週間前に発生した、東日本大震災によりお亡くなりになりました方々のご冥福をお祈りするとともに、ご家族や関係者の皆様方に対し、謹んで哀悼の意を表します。また、このたびの大地震により被害を受けられた方々に衷心よりお見舞い申し上げ、一日も早い復旧を心からお祈り申し上げます。
<式辞>
第64回の卒業生112名の皆さん、卒業おめでとうございます。
この佳き日にあたり、ご多用の所、豊島区・豊島区教育委員会より教育総務課長 吉末 昌弘様をはじめ、日頃、本校に何かとご理解、ご援助を賜っております大勢のご来賓の方々のご臨席をいただき、盛大に卒業式を挙行できますことは、誠にありがたく、本校職員一同と共に厚く御礼申し上げます。
そして、保護者の皆様方にも ご列席いただいております。本日は、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。この三年間、PTA活動等を通してお寄せくださいました本校へのご協力・ご支援を深く感謝いたします。
さて、卒業生の皆さん、先ほど、一人一人にお渡しした卒業証書は、中学校の全課程を修了したと同時に、九年間の義務教育を修了したことを証明するものです。今、卒業の式典にあたり、「池袋中学校で学んだことを礎に、自分の夢に向かって努力してほしい」ということを話したいと思います。
私はここ10年来、元日の新聞を6社分購入し、読み比べるのが習慣となっています。皆さんも知っているとおり、元日の各社新聞はとても厚く読み応えがあります。それにも増して、各社が力を入れて、この1年間日本はどうなるのか、世界はどうなるのかを占うとともに、どうあるべきかを主張しているところに興味があるのです。その中で私の目を引いたのは、日本経済新聞社の社説、「世界でもまれて競争力磨く志を再び」でした。そこには、次のことが書いてありました。
「長期停滞の中で育った若い世代には『努力してもそんなに豊かにはなれない』というあきらめもあるようだ。そこそこの生活ができれば、あくせく競うのは避けたいという気持ちもあるのだろう。アジア諸国に追われてはいるが、日本は技術に強い工業国。各国と競いながら腕を磨けば成長の余地はある。それを怠れば国の財政破綻などを通じ今の豊かさはやがて消える。過信もあきらめも捨てて、自らを鍛える志こそが大事ではないか。」と努力の継続が大切だと訴えていました。
みなさん第64回の卒業生のことを思うとき、私は東京スカイツリーとその姿を重ねてしまいます。昨日と今日の違いは見た目には余りわかりませんが、ぐんぐんとその高さを増していく東京スカイツリーと、皆さんの姿を重ねるようになっていったのです。皆さんが池袋中学校に入学した平成20年の7月14日に着工、卒業する平成23年冬に竣工する、「東京スカイツリー」。考えてみれば、皆さんが中学校で成長していくがごとく、中学校生活を追いかけるようにぐんぐんと伸びていきました。
一週間前の東日本大震災の揺れにも耐えうる技術は、日本最古の木造建築、法隆寺の五重塔を土台から貫く心柱を参考に耐震設計されているそうです。古くからあるものを新しい技術で再生する日本の技術力に驚かされると同時に、基礎が大切であることや、一本、ピンと筋の通った柱の重要性も感じます。皆さんにとっての基礎は池袋中学校での義務教育であり、筋の通った柱は、自らを鍛える志から生まれると思います。これからも、自己実現に向けて努力を続けてください。
タワーといえば、今までの東京のシンボル「東京タワー」があります。西岸良平(さいがん りょうへい)さん作のマンガ『三丁目の夕日 −夕焼けの詩−』が、ALWAYS 三丁目の夕日として映画化されました。東京タワーが建設された昭和33年、1958年を舞台にした1・2作が公開され、現在、その6年後の東京オリンピックが行われた昭和39年1964年を舞台に3作目を撮影中のようです。今から53年前の昭和33年、1958年、東京タワー建築中の日常の風景が1作目の舞台です。1作目の映画のキャッチコピーは「携帯もパソコンもテレビもなかったのに、どうしてあんなに楽しかったのだろう」です。少し、ドキッとする言葉です。50年前と比べて、物は格段に豊かになりましたが、心の豊かさはどうなっていったのでしょうか?キャッチコピーを逆説的にとらえれば、物の豊かさだけでは、心は満たされないということでしょう。
「知・徳・体」のバランスのよい向上を目指して取り組んでいる池袋中学校で学んだ皆さんは、是非ともそのバランスを保つように、心の豊かな人になっていってほしいと願います。
日本は、今大きな災害に見舞われ、大変なときです。しかし、関東大震災、阪神・淡路大震災からも見事に復興した日本は、今回も必ずや復興を成し遂げていくことでしょう。それは、皆さん方のような若い力が、志をもち努力を継続していくことでなし得るのです。ここから皆さんを見ていると、そのエネルギーにあふれ、たくましさを感じます。日本や世界を支える力として期待しています。
皆さんは、本日、池袋中学校を卒業します。これからも、この地域、郷土を愛し、池袋中学校の卒業生であることに自信と誇りをもってこれからの人生を切り開いていってください。また、卒業生として、地域に生活する者としてこれからも池袋中学校を応援してください。
卒業生諸君の今後の健やかな成長を祈念し、限りない前途を祝し、校長式辞といたします。
平成23年3月18日
豊島区立池袋中学校 校長 江川 登