最新更新日:2024/04/27
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笑瀾万丈23 横転レシーブ

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横転レシーブ

☆交通事故
 ガツーン。ふんわり、ドン。と音がした。ガツーンは車が側溝にぶつかった音。ふんわりは車がゆっくりと横転。そして、ドンは車が着地した音である。
 ヒロシが生まれて初めて経験する横転事故である。とても珍しい体験をした。田んぼと道路が接する左側の側溝に乗り上げ、その反動で左側が浮いてしまい、そして、右側に倒れた。ふんわりの瞬間がとても長い時間に思えた。この瞬間に人生の終わりかと思うくらい過去が走馬燈のようによみがえる。なんて、そんなことはないよ。あの世に行くのはまだ早い。気がつけば、体は地面に垂直である。垂直という表現、数学も役に立つねえ。ハンドルはにぎったままである。
 対向車の人がやってきて、左側のドアつまり上からドアを開けて、ヒロシを救いだしてくれた。幸いにもけがはなかった。何とついていることか。
 さて、この事後に至る伏線を述べよう。
ちょうどその日は、大学院の講義の三週目が終わった。教育学などの講義はとても面白くついていけた。ところが、数学の講義はヒロシにとってはとても難しかった。代数学、幾何学、解析学、確率論などの数学の講義を受けた。なかでも、矢吹先生の確率論の講義はレベルがとても高く、頭に入っていかなかった。それで頭はパニックしていた。
よりによって、大学から車で帰るとき、三木市を抜ける近道に挑戦しようとした。それがあの事故につながった。
 そして、ヒロシはどうなったか。
 どういうわけか、知り合ったばかりの佐伯陽先生の宿舎に転がり込んでいた。車の修理まで二週間、佐伯宅にお邪魔していた。出席番号が志水と佐伯は隣であった。だから、懇親会のときに隣り合わせとなり、意気投合したのであった。♪もしかして、もしかして、二人の出席番号は運命の赤い糸だったのかもしれない。神戸の自宅からささやかな食料を差し入れして、大きな顔をして転がりこんだヒロシであった。
 この二週間で佐伯さんにすっかりお世話になった。あの恩義は忘れられない。だから、一生の付き合いとなった。同じ年齢というのも偶然ではあるが気が合った。
 佐伯さんは、現在すでに定年退職した。しかし、退職後、広島大学の附属小学校の副校長、現在、附属中学校の副校長を勤めている。転がり込んだのは30年前とは思えない出来事である。

教訓:事故に会って運が悪いようだが、この後、運の良いことが続いたわけで、新しい運の始まりでもあった。


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