最新更新日:2024/05/15 | |
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笑瀾万丈29 ☆さて、一年と三ヶ月後ヒロシはまた、一年生の担任をしていた。つまり、落第したのであった。再度一年生をせよという指示であった。嘘ですよ。本当は、一年生の魅力に二学期に目覚め、学年希望に対して再度一年生を担任したいと書いた。すると、希望を叶えてくださった。内田校長先生ありがとうございました。 九月のはじめだったと思う。 出張から帰り、職員室のイスに座った。ヒロシはデスクと上ガラスに挟まれた文書を見た。すると職務令書があった。 なんだ、これは何のいたずらか。 文面を見た。 「あなたに、今度の音楽会のピアノ伴奏を命じる」(上月幸子学年主任) 見回すとまだ主任は出勤していない。 有無を言わせない手法である。 ええっ!! ヒロシの細い細いたれ眼の眼がまん丸と最大限に開いた。瞳孔まで開いたかもしれない。 どうこう言っても「しゃあないなあ」。 また、驚愕の世界に引き込まれた。 ヒロシが保護者の前で指揮者ではなくて、音楽の器楽伴奏でピアノを弾けということだと。 上月主任が出勤してきた。にんまりしている。 「はい、分かりました」というしかなかった。 またまた、大変な自体になった。 それから毎日夕方になると、講堂のピアノとにらめっこである。 にらめっこしていても上手になるわけないが。 「あーあ、引き受けなければよかった」 男としての見栄が練習に駆り立てた。 ところが、ピアノのタッチが違う。教室の電子ピアノはエレクトーンのタッチで非常に柔らかい。今度は、ピアノは堅い。重い。ヒロシの太いきゃしゃな指先では鍵盤はなかなか良い音をだせなかった。それからというものの、まずは指に力を入れることを訓練した。箸をもつとき、ハンドルを握るとき、握手するとき、すべて指の筋肉トレーニングにいそしんだ。 だから、指が痛くなった。 ♪あなたが噛んだ小指がー痛い。昨日の夜の指の練習でいたい。 練習すること3週間。 |
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