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笑瀾万丈 5 数学科ゼミの配属 Web公開

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笑瀾万丈劇3 数学科ゼミの配属

☆密談する三人
 大学三年生の九月のこと。
 数学科の同級生のO君、I君とヒロシがいた。
「どうする?ゼミの希望を。」
「うーむ、どうしようかなあ。」
「分からんなあ。」
と3人は語り合っていた。
「数学をやるつもりはないし…。」
「かと言って、数学教育の先生も…。」
 これまで授業を受けた中で、ぴったり合うような教官は見当たらなかった。生意気なことを言う、世間知らずの三人の学生がいた。その中の一人は、もちろんヒロシであった。
「あっ、そうそう。三輪先生っているよね。」
「どうやら数学教育を専門としているらしいよ。」
「へぇーそうなんだ。」
「三輪先生は、確か一年生の時に代数学の授業をしてくれたね。とても分かりやすかったよ。」
「そうだね。分かりやすかった。」
「でも、引き受けてくれるかなあ。」
「夜間課程の二部の先生だよ。」
「無理かなあ。」
「数学科の主任教官に相談に行こうか。」
「それがいいな。」
と、よもやま話から三人は数学科の主任指導教官のA教授の元に相談に行った。すると、「三輪先生が引き受けてもよいというのならばかまいませんよ。」
という返事をもらった。
 喜びいさんで三人は、三輪先生に会いに行って、「先生に数学科のゼミ指導をお願いしたいのですが…。」
 すぐに快諾かと思いきや、三輪先生は慎重だった。
「ぼくの方針はたくさんの人は取りません。また、研究をやりたい分野が異なると指導はできません。だから、私が指導できるかどうか研究分野次第です。研究したいことをまとめて来なさい。そこから考えましょう。」
 この返事で、難しいと判断すべきだった。でも、ここまで来たら、三輪先生にすがるしかない。三輪先生の得意な分野って何だろう。ということで、三人は大学の図書館に赴き三輪先生の得意分野を雑誌などで調べた。「数学教育」か「数学教室」かは忘れたが、三輪先生の論文が掲載されていた。題目は「関数教育」である。やっと見つかった。入りたいとなれば、何としても見つける。これが人の道。

教訓:希望を持てば、人はどんどん行動する。

これならば、我々にもできそうだということになり、面談に行った。
「先生、研究テーマのことですが、『関数教育』について調べたいのですが」
しばらく考え込んで、「いいよ。それなら指導できる。」
「やったあ!!」
 勝利の心の声。思わず顔がほころぶ。喜んだ。が、
 次の瞬間、ががーん、と人生まさか…。真坂の坂道を転げ落ちる。
「来週からゼミを実施します。」
「ええっ!?」
「そんなはずではないのに。普通のゼミは四年生からですよ。」と心の声が叫んでいたが、自分たちが希望したのだから、「いやです。」とは言えず、「はい。」と、うなずくしかなかった気の弱い三人であった。
 また、三輪先生の次の言葉がトドメを指した。
「これを翻訳します。」
 先生が取り出したのは、アメリカの数学教育団体(NCTM)の年報で「FUNCTIONAL THINKING…」分厚い本であった。昭和の初期に出されたもので、英語も古い文語調のものであった。今から思えば三輪先生は、ゼミを引き受けるとしたら関数を再度学び直しをすることに決めていたと思う。三輪先生の術中にはまったヒロシであった。
これをゼミで毎週、連続で翻訳していく作業となった。三人しかいないのですぐに順番が回ってくる日々であった。でも、このことは関数教育の基礎として何が大事かを身に付けさせていただいたと思う。とてもありがたいことであった。


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