最新更新日:2024/04/27
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笑瀾万丈18 突然の嵐

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☆夏休み開始早々

 転勤してから四年目のこと。夏休みが始まって、二、三日して、突然、組合の分会会議の招集の連絡がきた。
 8月30日。五位ノ池小学校の会議室に五位ノ池小学校の教職員が集合させられた。
 組合のお偉いさんがやっ来て、「ここにいる志水先生は、兵庫教育大学大学院を受験します。なぜ、受験するのか。ここに問いただしたいと思います。皆さんもご存知のように兵庫教育大学は文部省が推進する大学です。非常に右傾化した大学です。ここを受験すること自体が遺憾なことです。」
 ヒロシは、なぜ受験のことが漏れたのだろうか。校長先生と神戸市の教育委員会しか知らないはずなのにと思い戸惑っていた。誰か漏らした人がいるのは間違いない。でも、目の前にオルグという現実がある。ようするに「つ・る・し・あ・げ」である。揚げ物ならば美味しいが、このつるしてあげは堪らない。集団でのいじめである。
「なぜ、受験したいのか分からない。」
「早く管理職になりたいからか。」
と批判の声が続く。
 27歳の時であるから管理職などということは考えるはずもなく、自分が勉強したいという一念で考え出したことである。世の中には、そういう人たち(若くして管理職願望)がいることを改めて知った。
ヒロシは、立ち上がり、鉄よりも重い重い、重い口を開いた。
「私は、ここ数年間にネタがつきたと思ってきました。もう一度、大学で勉強したいと思いました。もちろん、組合は地区の役員までやっているので組合のことは大事に思っていますが、でも勉強することを誰も止める権利はありません。夏休みなのに、皆さんに集まっていただいたのは申し訳ありません。でも、受験に関しては、謝りません。行きたいから行くのです。」
重い唇ではあったが、軽くはっきりと明言した。
 ヒロシは、普段はこれほどきっぱりと言わない性格である。つまり、ほんわかタイプである。しかし、なぜかメラメラと正義感が沸いてきて、発言した。自分で言うのも何だが、かっこよかった。魂の底からの声が出ていた。
 ♪あの〜、人は言って言ってしまった。あの〜人は言って言ってしまった。もう帰らなーい。いや、戻れなーい。
 長い長い一時間であった。
 この発言をした以上は、後に引くことはできない。こちらは家族を支える必要がある。ヒロシは、「この勝負、決める。」と堅く誓った。受験までの数日、猛勉強に励んだ。そして、合格を勝ち取ったのであった。
 それからも同僚からの嫌がらせは多々あった。それでも付き合っていくしかない。昨日まで、ヒロシの自宅まで来てわいわい騒いでいた同僚が離れていったことにじくじたる思いがあった。
 この分会会議のことは今となっては笑い話である。要するに組合の幹部は、組合のメンツを立てたいからやってきて、話しているだけである。メンツということをもっと知っていれば、違う対応もできたと思う。あれから5年くらいして今度は、組合は兵庫教育大学大学院に賛成の立場をとった。今度は組合推薦でなければ受験できない世界である。これもおかしい。憲法で保証された学問の自由は個人の権利であって、団体の権利ではないのである。


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