第四十一回卒業式
式 辞
今年の冬は、例年にない厳しい寒さが続き、私たちを驚かせました。
そんな中でも、木々のつぼみは着実に開花の準備を進め、今、春の訪れが間近であることを伝えてくれています。その様子は、希望に胸を膨らませ、新しい世界へ旅立とうとしている皆さんと重なって見えます。
本校第四十一回卒業生として巣立ちを迎えられた一三七名の皆さん、卒業おめでとうございます。
また、本校の卒業式にご臨席を賜りました 岩倉市長 久保田 桂朗 様をはじめ、多数のご来賓の皆様には、高い席からではございますが、厚く御礼申し上げます。
保護者の皆様方、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。こうして卒業の日を迎えられ、立派に成長した我が子の姿を目にして、感激も一入のことと拝察致します。本校の教育に、これまで多大なるご支援とご協力をいただきましたことに対して、改めて心より感謝申し上げます。
さて卒業生の皆さん、南中でのこの三年間は、皆さんにとってどのようなものだったでしょうか。例えば部活動や勉強で、例えば友達との関係で、例えば自分の将来に対して、様々な悩みや苦労があったことと思います。その一つ一つを、時には自らの努力で、時には友達や家族の力を借りて乗り越えてきました。また時には目を背けて、そっとやり過ごしたこともあったと思います。いずれにせよ、その経験のすべてが、大人への歩みを進めていく皆さんのエネルギーになっています。
一昨年、ノーベル文学賞を受賞したアメリカのシンガー・ソングライター、ボブ・ディランは、彼の代表曲「風に吹かれて」を、こう歌い始めます。
どれだけ長く歩き回れば
人は一人前と呼ばれるようになるのだろう?
どれだけ 多くの海を渡ったら
白鳩は体を休めることができるのだろう
どれだけの砲弾が飛び交えば
戦争は止めることができるのだろう
その答は、友よ、風に吹かれている
その答えは風の中に舞っている
人生の問題、地球環境の問題、世界平和の問題・・・
皆さんがこれから足を踏み入れる社会は、どれだけ努力をしても、どれだけ知恵を絞っても、答えにたどり着けない問題に満ちています。「答えは風に吹かれている」答えが捕まえられそうだけど逃げていってしまう。そんな場面に何度も出会っていくことになります。
AIが急速な進化を遂げ、答えの出る問題を正確に素早く処理してくれる現代においても、そしてそれがさらに発展する将来にわたっても、答えの出ない問題に立ち向かっていくことは人間にしかできません。風に吹かれている答えを捕まえようとする行為は、人間が人間であることを確かめる営みに他なりません。
勇気をもって、胸を張って、人間らしく大人への歩みを続けてください。
皆さんはこの三年間、「知をひらく」授業の中で、正解の無い問いや、幾通りもの答えのある問いに、友達とやわらかく関わりながら、頭を寄せ合って挑んできました。雨の中の体育大会に代表されるいくつもの行事を、友達と知恵を寄せ合って立派に成功させてきました。その記憶が、必ず皆さんを支えてくれます。南中の卒業生としての誇りをもって一歩踏み出してください。
人類が経験したことのない、まったく新しい世界を、これから皆さんは生きていくことになります。その中で、答えの定まらない問題に、人間らしく向き合っていってほしいのです。南中で育った皆さんだからこそ、それができるはずです。
皆さんの健闘を心から願い、その人生に幸多からんことを祈って式辞といたします。
平成三〇年三月六日
岩倉市立南部中学校長
有 尾 幸 市