最新更新日:2024/05/13
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第1ステージ「出会い」 4月5日〜6月2日

中体連の思い出

中体連が6月30日からスタートしました。この季節になると夏の暑さと心の熱さと、一種のほろ苦さが重なります。
自分は長い間卓球をやっていました。卓球の経験者なら、直感的に9対7という世にも恐ろしい「魔のカウント」がピンと来ると思います。自分自身、この9対7というカウントに翻弄され、何度辛酸を舐めさせられたかわかりません。
フルセットの末、9対7でリードしたまさにその時、耳元で悪魔が甘くささやきます。
「あと1点取れば楽になれるよ〜〜。」
たいてい悪魔はそこでもう1点をプレゼントしてくれます。これで10対7。あと1点取ればゲームセットだ!その次の瞬間には、チームメイトや応援団の歓声と賞賛を浴びながら自慢げに微笑む自分の勇姿が、フラッシュ撮影のように脳裏をかすめるのです。そこで、またしても悪魔は蠱惑のまなざしを送ります。
「もう勝ったようなものさ。ヒッヒッヒッ〜〜。」
さらに悪魔の名シナリオライターは、みごとな悲劇的クライマックスを演出します。あれよ、あれよと思う間に、相手の奇跡がかったファインプレーで10対9、10対10。そして自分でも信じられないレシーブミスとスマッシュミスを連発して10対12か12対14で敗れるのです。審判のゲームセットの声。ベンチのため息。相手選手の小躍りする歓喜の姿。自分に何が起こったのかもわからぬままに、負けを正確に知らせる得点板を再確認しながら無表情にこうつぶやくのです。
「なぜ、俺はいつもこうなんだ…。」
もうこの場面では、何の叱責の声も慰めの言葉も耳に入りません。自分の死体を自分で眺めているような虚ろな感覚だけが残像として浮かび上がり、やがて静かに消えていきます。
 魔のカウント。これはスポーツの世界に限った話ではありません。たぶん、自分の身のまわりの多くの者が過去に悪魔の誘惑に駆られ、魂を弄ばれた経験をもっているに違いありません。悪魔は心のヒダに隠れ住み、うまくいきそうな時や無事に終盤を向かえそうな時に限って、その狡猾で官能的な姿を現します。そして魅惑的な声でこう囁くのです。「なあに、少しぐらい手を抜いたって何とかなるさ。」「手を抜いているのは、あなただけじゃない。ほらあの人も、この人もみんな怠けている。」「そんなに心配しなさんな。目をつぶっていたって成功するさ。」「ムキになるなよ。楽をしようぜ。人生は時の運さ。」
 魔のカウントがやってきた時に大切なのは“平常心で普通にやること”“いつも通りにやること”だと思います。これは簡単そうで、実は一番むずかしいのです。魔のカウントから逃げようとすれば追いかけられ、執着すれば餌食になる。驕らず高ぶらず心を穏やかに保ち、苦難や試練とさりげなく接して、自分のできることを淡々とやっていくしかないような気がします。いわば「無」の境地に向かうことなのです。

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