最新更新日:2024/06/20
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第2ステージ「挑戦」 6月3日〜8月26日

ドラマのようにいかない現実が人を鍛える

ドラマのようにいかない現実が人を鍛える

もうすぐ中体連がやってきます。この季節になると必ず思い出す言葉と、試合があります。  努力は人を裏切らない
「その通り!」と思う反面、努力=成功=幸福という方程式は成り立たないのではないかと密かに考えてしまうのです。もしかすると(努力+忍耐+挫折)×試練=成功の可能性=幸福感ではなかろうかと感じています。
 僕は若い頃、卓球をやっていました。何度か試合に出ましたが、ほとんどがみじめな敗戦でした。自分の長男も次男もずっと卓球をやっていましたが、両方ともインターハイに出場することはできませんでした。自分の顧問時代は「全国大会出場」を目標に、1年間を通して鬼のように練習しましたが、けっきょく東海大会へも行けませんでした。
今から8年前の平成16年7月31日、この日の映像は時々夢にも出てきます。中体連県大会“卓球男子団体戦”。場所は静岡県武道館メインアリーナでした。予想通り中部の強豪服織中、西部の名門庄内中、そして自分の裾野西中が予選リーグを勝ち抜き浮上してきました。決勝トーナメントの最大の難関は、少年団の多い浜北・北浜中でしたが、ここには辛うじて勝ち、いよいよ東海大会の道が眼前に迫ってきました。
「あと1つ勝てば東海大会だ!」生徒を前に、興奮を隠しきれないミーティングが終わると、次の相手はY中でした。少年団の多いチームでしたが、かつて1度も負けたことはありません。会場は気合いのこもった顧問の声と2階席からの保護者や1・2年生の大声援が和音となって響き渡り、最高の盛り上がりを見せていました。
気がつくと選手の顔は緊張で引きつり紅潮しています。
「なあに、この日のために地獄の練習を積み重ねてきたんだ。負けるわけがない。」僕は早くも、東海大会の要項を見て場所と日付を確認し、バス会社の電話番号を手帳に記入していました。ところが、試合は思わぬ方向に展開し2勝2敗にもつれこんでしまったのです。こうなると最後の5人目で勝負が決まります。5番手は百戦錬磨の選手でしたので心配はしていませんでしたが、思いもよらずフルセットのデュースに持ちこまれ、大苦戦をしいられているのです。
13対13、14対14、14体15 危ない・・・・・。
「何やってんだ。よし、今がチャンス!」しかし、運命のスマッシュは、ネットをかすめコートを外れて空しく落下していきました。
「あっ…」ベンチの部員たちの悲鳴とも絶叫ともつかぬ声が会場に響き渡りました。
この瞬間、東海大会出場の夢も水蒸気のように消え去っていきました。勝利した相手校の歓喜の声と、躍り上がって喜ぶ姿がスローモーションフィルムのように見えました。2階の応援席で見ている保護者は呆然と立ちつくし、後輩の1・2年生も石のように硬直してこちらを見つめています。挨拶を終えた後、6名のレギュラーが僕のそばに駆け寄ってきました。皆、泣いていました。
「先生、すみませんでした・・・。」
数秒後、場内アナウンスが勝負の明暗をはっきりと告げました。
 [準決勝に出場するY中は次のオーダーを提出してください。]
僕は選手にかける言葉をさがしていましたが、見つかりませんでした。
「なあ、高校で卓球やるか。」
「はい、やります。」
皆、努力は人一倍しました。しかし、現実はドラマのようにハッピーエンドには終わりません。部活動は3年間をかけて勝利を目指します。僕も生徒たちも「頑張ったから、それで良い。」だとか「勝負は時の運。」などとは到底思えませんでした。
 中学校を卒業した生徒は、高校ではあまり運動部に入りたがりません。引き続き苦しい日々を経験することは好まないのでしょう。ただ、絶望や挫折をこれでもかと味わった彼らは、再び卓球部に入部していきました。長男も次男も大学で続けました。みんな不完全燃焼の決着がついていなかったからだと思います。僕は転勤して部活動から完全に外れました。しかし、今でも若い時に部活動を「とことんやる」ことが尊く、何ものにも代えがたいことだと信じています。
(努力+忍耐+挫折)×試練=成功の可能性=幸福感
全国レベルの試合に勝つとか、世の中の脚光を浴びるとか、人生の栄光をつかみとるとか、そういう大きな「成功の可能性」はありませんが、何かをとことんやっていると、平凡な日常の中にさえ「幸福感」を味わえる人になれるような気がしてなりません。

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