最新更新日:2024/04/26
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校訓「正しく 明るく 健やかに」

一冊の本から

 今日の集会では,一冊の本を読んで感じたことを話しました。

 本校では,生徒玄関を入ったところに本が並べてあります。そして,生徒が自由に手に取り,ノートに必要事項を記載し,借りていけるようになっています。私も先日,一冊の本を借りました。「人質の朗読会」(小川洋子著)という小説です。
 旅行者が企画したツアーに参加した8名の人たちが,遠く離れた外国で拉致,監禁されました。事件を解決しようと,特殊部隊が動きますが,残念ながら被害者は犯人によって爆破され,全員亡くなってしまいます。特殊部隊の人たちも何人かが亡くなったり負傷したりしました。
 拉致,監禁された被害者は,捕らえられているときに,一人一人の思い出を語ります。この小説は,その内容が短編集のような形で載せてあります。そこでは,人生の大きなイベントや出来事ではなく,日常の,ほんの些細なことが,思い出として語られています。例えば,公民館の中の小さな談話室での出来事であったり,路上で売られていたぬいぐるみの話であったり,また,通勤途中で出合ったやり投げの選手のことであったり。
 先回の講話で,私は「人生は要約できない」「学校生活は要約できない」という話をしました。大きなイベントや行事は大切だが,何気ない日常の積み重ねが人の人生や学校生活を作っている。友達との会話,毎日行っている授業や掃除,そういったものを大切にして欲しい。こんな話をしたと思います。
 この「人質の朗読会」を読み,改めてそのことを感じました。
 なお,この本を借りようと思った理由は,本のカバーに書かれていた内容紹介を読んで,興味を持ったからです。

 遠く隔絶された場所から,彼らの声は届いた。慎み深い拍手で始まる朗読会。
祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは,人質たちと見張り役の犯人,そし
て・・・・。
 人生のささやかな一場面が鮮やかに蘇る。それは絶望ではなく,今日を生き
るための物語。しみじみと深く胸を打つ,小川洋子ならではの小説世界。
〜中公文庫内容紹介より引用〜

 もしもこの本を読んだ人がいたら,是非感想を聞かせて欲しいです。人によって感じ方は違います。同じ小説を読んで,どのように感じたのかを知り,感性を広げたり深めたりしたいものです。

学校生活は要約できない

 今日の集会では,学校生活は要約できないことについて話をしました。

 私は本が好きで,よく小説を読みます。好きな作家がたくさんいますが,その中の一人,伊坂幸太郎の作品から,印象に残った文章を紹介します。
 「モダンタイムス」の中に,次のような一節があります。登場人物の台詞です。

 「人ってのは毎日毎日,必死に生きているわけだ。つまらない仕事をしたり,誰かと言い合いしたり。そういう取るに足らない出来事の積み重ねで,生活が,人生が出来上がってる。だろ。ただな,もしそいつの一生を要約するとしたら,そいういった日々の変わらない日常は省かれる。結婚だとか離婚だとか,出産だとか転職だとか,そういったトピックは残るにしても,日々の生活は削られる。地味で,くだらないからだ。でもって,『だれそれ氏はこれこれこういう人生を送った』なんて要約される。でもな,本当にそいつにとって大事なのは,要約して消えた日々の出来事だよ。子供が生まれた後のおむつ替えやら立ち食いソバ屋での昼食だ。それこそが人生ってわけだ。つまり」
 「人生は要約できない?」
     伊坂幸太郎 「モダンタイムス」より引用

 このことを学校生活に置き換えてみましょう。
 皆さんは学校で,毎日いろいろな活動をします。授業に参加し,クラスメイトと学び合ったり先生の話を聞いたりします。給食の準備や掃除に一生懸命取り組みます。朝や帰りには部活動の練習もあります。また,友達との関わりで,ホッとしたり,ちょっとしたトラブルがあったりすることもあるでしょう。
 こういう何気ない出来事の積み重ねで,学校生活が成り立っています。しかし,その学校生活を要約するとしたら,そういった変わらない日常は省かれてしまいます。入学式や卒業式,宿泊行事や校外学習,体育祭や文化祭といった行事は残るにしても,日々の学校生活は削られてしまいます。そして,「あなたはこれこれこういう学校生活を送った」なんて要約されてしまいます。しかし,あなたにとって本当に大切なのは,要約して消えた日々の出来事なのです。つまり,学校生活は要約できない,ということです。
 行事はもちろん大切。本番に向けて様々な準備をし,練習もします。行事を通して大きく成長します。しかし,学校生活は,日々の何気ない多くの出来事の積み重ねなのです。
 少し前に修学旅行が終わりました。そして,今週は2年生の野外活動があり,1年生は校外学習があります。これらの行事で感じ,学んだことを,是非とも日々の学校生活で生かして欲しい。そんなことを願い,あえてこの時期に書いてみました。
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